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LOCAL LETTER

空き家を、まちの入口に。静岡県森町で地域の拠点と仕事を育てる協力隊募集

SHIZUOKA

拝啓、決まった仕事をこなすより、地域と一緒に事業を育てたいアナタへ

森町では今、空き家活用と二地域居住を一体で進めています。地域を訪れる人が滞在し、地域の人と出会える拠点をまちの中に増やし、それぞれをつないでいこうという構想です。

その最初の一棟となるのが、商店街にある、かつて衣料品店として使われていた店舗兼住宅「びっくりや」です。

ただし、完成形はまだ決まっていません。

1階の店舗や庭をどう使うのか。誰が集い、どのような活動や仕事が生まれる場所にするのか。今回募集する地域おこし協力隊は、完成した施設を引き継ぐのではなく、その答えを地域や行政、民間企業と一緒につくるところから関わります。

一軒の空き家を、どのようにまちの入口へ変えていくのか。森町役場定住推進課の榊原さん、林さん、二地域居住コーディネーターの藤根さん、地域活性化起業人である株式会社ネクスウィルの梶田さんにお話を伺いました。

自然も文化も人も近い。「ほどよい田舎」森町

森町は、静岡県西部に位置する人口約1万6,400人のまち。町内には、新東名高速道路のインターチェンジが2カ所あり、浜松市や袋井市の市街地にもアクセスが便利です。

「インターチェンジから10分ほどで、里山や田園風景が広がります。でも、浜松や袋井へも30分ほどで行ける。病院もありますし、暮らしに大きく困らないんです。自然と利便性のバランスが、森町のよさだと思います」(榊原さん)

榊原 希美氏 森町定住推進課 / 森町生まれ、森町育ち。大学卒業後、新卒で森町役場へ入庁。2019年から移住・定住支援に携わる。現在は空き家の利活用や二地域居住を通じ、森町に関わる人を増やす取り組みを進めながら、地域おこし協力隊の活動にも伴走している。

全国で空き家活用に携わってきた梶田さんも、森町の風景に心を動かされた一人です。

「田畑の中にある空き家を見に行ったら、目の前がずっと開けていて。風がそよそよ吹いて、鳥の声が聞こえる。日陰は涼しくて、本当にいい場所だなって」(梶田さん)

梶田 和典氏 株式会社ネクスウィル / 21歳で渡米し、チリでの生活や南米各地への旅、妻との自転車日本一周などを経験。帰国後、不動産業界へ転身。現在は相続した空き家や売却が難しい不動産の買取・利活用に携わり、自治体と連携して空き家を地域資源として生かす取り組みを進めている。2026年4月、森町から地域活性化起業人に委嘱される。

森町には、小國神社をはじめとする神社仏閣や祭りなど、地域に受け継がれてきた文化も息づいています。こうした風景や文化に惹かれて移り住む人もいれば、一度まちを離れた後、森町での暮らしに魅力を感じて戻ってくる人もいます。

そして森町のもう一つの魅力が、人との距離の近さです。移住コーディネーターの藤根さんも、移住した当初から地域の温かさを感じてきました。

「結婚を機に森町に移住した時、地域の方が温かく受け入れてくださったんです。それが本当にありがたかったです」(藤根さん)

藤根 茉由子氏 二地域居住コーディネーター / 東京でWebディレクターとして勤務後、結婚を機に静岡県へ移住。現在は森町を拠点にライター、コミュニティ運営、事業者の情報発信・運営支援に携わる。2026年7月、森町二地域居住コーディネーターに委嘱され、人と地域をつなぐ活動に取り組む。

森町では、住んでいる地区を伝えるだけで、共通の知人が次々と見つかるほど人と人との距離が近いといいます。外から来た人に対しても、「どこから来たの?」と関心を持って声をかけてくれる方が多いそうです。

「全国から来た方が一番驚くのは、コミュニティの濃さかもしれません。祭りでは、3日間ずっと山車を引くような地域もあります。それだけ、皆さんが地元に熱い思いを持っているんです」(藤根さん)

移住だけを待たない。二地域居住を進めるために

森町では約10年前から、移住・定住や関係人口づくりに取り組んできました。近年、新たに進めているのが、都市部などの生活拠点を残しながら、森町にも継続的に滞在する「二地域居住」です。

仕事を続けながら週末を自然の中で過ごしたい人。将来の移住を見据え、まず地域との関係をつくりたい人。森町には少しずつ相談が寄せられています。

子育て世代の二地域居住の可能性も探っています。2025年度には、子どもが都市部と地域の学校を行き来する「デュアルスクール」に着目し、教育を軸とした二地域居住の可能性調査を行いました。

「移住希望者からは『仕事はありますか』という相談が多いです。一方、二地域居住を考える方は、すでに仕事を持っていることが大半で、『この物件で民泊をやれますか』『森町でこんな暮らしをしたい』と、自己実現に近い相談が多いんです」(榊原さん)

関心を持つ人は増えていますが、受け皿となる滞在場所が十分にはありません。町内の空き家は2016年の約500件から、2022年には約600件へ増えましたが、すぐに使える物件は限られています。

「二地域居住で大切なのは、住まい、なりわい、コミュニティです。仕事を持っている方でも、住む場所がなければ来られません。さらに、家が見つかっても、地域とつながれなければ関係は続きにくい。堅苦しくなく、自然に接点が生まれる仕組みをつくる必要があります」(榊原さん)

地域との接点は、大がかりなイベントだけから生まれるものではありません。日々の行事や活動に顔を出し、言葉を交わすことが、関係を育てる入口になります。

「地域の行事や清掃活動に参加すると、顔を覚えてもらえます。二地域居住で来る方にも、地域の方と接点を持てる機会があれば、入りやすい森町になると思います」(藤根さん)

滞在する場所と、人に出会うきっかけ。その両方をつくるために、森町は空き家活用と二地域居住を一つの取り組みとして進めようとしています。

点を増やして線で結ぶ。「びっくりや」から始まる挑戦

森町は約10年前に空き家・空き地バンクを立ち上げました。しかし、登録件数を増やしても、すでに傷みが進んだ物件はなかなか動きませんでした。

「所有者が手に余らせ、不動産事業者でも扱えない物件が、最後に空き家バンクへ来ることが多かったんです。川下で待っていても難しい。そこで、建物がまだ健全な段階から働きかける、川上からのアプローチへ切り替えました」(榊原さん)

現在は、家の将来を考えるワークショップや、所有者の意思を家族に残す「決断シート」などを活用し、空き家になる前から相談してもらう取り組みを進めています。

「最近は、空き家になってから時間を置かずに、『早く手放したい』と相談に来られるケースも出てきました」(林さん)

林 若菜氏 森町定住推進課 / 森町生まれ、森町育ち。大学卒業後、森町役場へ入庁し、ふるさと納税、観光、広報などを担当。育児休業を経て定住推進課へ配属された。季節ごとに移り変わる田んぼの景色が好きで、移住・定住支援を通じて森町に関わる仲間を増やす仕事に取り組んでいる。

早めの相談を次の活用につなげるには、その可能性を目に見える形で示すことも必要です。

森町では、5年ほど前に一般社団法人モリマチリノベーションが立ち上がり、空き店舗を一つずつ再生してきました。旧レコード店を宿泊機能などを備えた複合施設「pieces」へ生まれ変わらせるなど、空き家活用の「点」はすでに生まれています。ただ、一つひとつの物件を数年かけて改修する形では、変化が地域全体へ広がるまでに時間がかかります。

そこで、今ある「点」をさらに増やす新たな拠点として位置づけられているのが、商店街に建つびっくりやです。かつて衣料品店だった店舗兼住宅を、二地域居住者が滞在し、地域の人と交流できる拠点へ改修する計画が進んでいます。

「びっくりやは、一見すると全国どこにでもよくある空き家だと思います。でも、店舗があり、庭があり、2階や屋根裏もあって、場所も商店街の中心です。なんとかなるだろう、面白くできるだろうと思いました」(梶田さん)

「びっくりや」平面図

2階は、二地域居住者などが滞在できる場所として整備する構想があります。一方、1階や庭の使い方は検討中です。取材では、本屋や野菜販売、カフェ、子どもの遊び場など、さまざまな案が挙がりました。

梶田さんが地域の人と関わるうえで大切にしているのが、相手の「本音」を聞くことです。

「地域の方に聞くと、近くにスーパーがなく、野菜を買うのが大変だという話もありました。僕はブルワリーのような人が集まる楽しい場所をつくりたいと思いますが、まずは地域に必要とされているものを聞きたいです」(梶田さん)

目指すのは、地域の人にとっても、二地域居住で訪れる人にとっても、自然に接点が生まれる場所です。藤根さんは、地域の声を聞くプロセスそのものが欠かせないと話します。

「箱だけつくって、『これは何だろう』と受け入れてもらえない状態は避けたいです。そのためにも、まずは周辺の街並みや地域の方の思いを汲みながら、何が必要かを考えたいと思います」(藤根さん)

びっくりやは、森町の空き家活用を広げていくための最初の拠点です。建物が生まれ変わる姿を示すことで、周辺の空き家所有者や、森町で何かを始めたい人の次の一歩にもつなげようとしています。

「一個だけだったら、何の力もないと思うんです。まず一つつくり、二つ、三つと空き家を活用していく。『森町で面白いことが始まっている』と感じて、外からプレイヤーが集まるような商店街にしたいです」(梶田さん)

「一つの物件が変わると、『あんなふうになるなら、うちもお願いしていいかもしれない』という反応が生まれます。今こそ点を一気に増やし、線で結ぶ時期だと考えています」(榊原さん)

拠点運営から、その先の事業へ。2人で育てる3年間

今回募集するのは、びっくりやを中心に、二地域居住や移住・定住につながる拠点を企画・運営する地域おこし協力隊2名です。

地域の声を聞きながら施設の使い方を考え、利用者を受け入れる。交流の機会をつくり、活動を発信する。行政や企業、空き家所有者、地域の事業者をつなぐことも、仕事の一部です。

正式な着任を待つ間にも、プロジェクトは少しずつ進んでいきます。そのため森町では、オンライン説明会や現地視察に加え、インターンなどの形で、応募前から現地に関われる機会も検討しています。

「興味を持った段階から森町へ来て、『こういうものがあったらいいのでは』と意見を出してほしいです。改修が進む前から関わってもらい、その体験が応募につながる形もつくれたらと思っています」(榊原さん)

これまで8名の協力隊を受け入れてきた森町は、その経験から、任期中の活動だけでなく、卒業後の仕事まで早い段階から見据えることが大切だと考えています。

今回の募集では、単に拠点を運営するだけでなく、2名で複数の拠点や事業を育て、将来的には会社や一般社団法人などの形で運営を担うことも視野に入れています。プロジェクトの立ち上げやマネジメントの経験を、地域での事業づくりに生かせる仕事です。

「びっくりや一軒だけで、3年後に生計を立てるのは難しいと思います。ほかの拠点も複合的に運営し、会社や一般社団法人などの形で継続できれば理想です。もちろん、空き家活用だけに限らず、『これもやりたい』という提案もお待ちしています」(榊原さん)

これらの地域おこしの挑戦をサポートする体制も整っています。

定住推進課は、着任後の活動計画を協力隊と一緒に立て、地域住民や庁内の関係部署との橋渡しを担います。空き家の掘り起こしや所有者との調整、取得・活用の実務面では、梶田さんとネクスウィルが連携します。藤根さんは、協力隊に近い立場から日々の業務や地域との関係づくりを支え、町内外の人や事業者との接点づくりでも力を発揮することが期待されています。

「私自身、現在の移住コーディネーターから、業務の進め方や事務面について密に支援してもらっています。そうした支援を引き継ぎ、新しい協力隊員もフォローしたいです。役場には直接言いにくいことが出てきた時も、私や、すでに活動している協力隊、移住コーディネーターと連携しながら支えられればと思っています」(藤根さん)

それぞれ異なる強みを持つ関係者が、協力隊と一緒に活動を進めていく予定です。

主体性と「ほどよさ」を携えて。支え合いながら進む人へ

施設も、そこで生まれる事業も、まだ完成していません。だからこそ、自分から考え、周囲へ働きかけられる人にとって、これまでの経験を生かせる余白があります。

一方で、地域で事業をつくる仕事は、一人のアイデアだけでは進みません。

「主体性を地域で生かすためには、関係者と協力しながら進めることが大切です。そのためには尖りすぎず、地域や行政と歩調を合わせられる『ほどよさ』も重要です」(榊原さん)

地域で交わされるさまざまな声も、拠点や事業を育てるための手がかりになります。

「僕自身も本音で話しますし、相手の本心をできるだけ聞きたいと思っています。まちの課題や近隣の方の困りごとをよく聞いて、それを解決できる人に来てもらえたらうれしいです」(梶田さん)

地域の人々と対話を重ねながら、焦らず、少しずつ形にしていく。決して簡単な道のりではないかもしれませんが、共に悩み、喜べる心強い仲間がここにはいます。

「森町には、いいところがたくさんあるので、一度来たらきっと好きになってもらえると思います。気になった方は、まずは森町に来てください。来てからのフォローは、町としてしっかり行いますので」(榊原さん)

「仲間が増え、一緒に活動できる方が来れば、こちらも楽しいですし、できることも増えます。本当に期待しています」(林さん)

森町では、オンライン説明会と現地視察を予定しています。

自分の経験を、地域で手触りのある仕事に変えてみたい。人の声を聞きながら、まだ形のない事業を育ててみたい。

そう感じたアナタは、まずは森町を訪れ、びっくりやと、このまちの人に会ってみませんか。

静岡県周智郡森町地域おこし協力隊員 募集要項

<募集人員>
2名

<活動ミッション>
■二地域居住・移住推進支援、拠点施設の運営
■地域資源活用

<雇用形態・勤務時間>
■任用形態:委嘱型
■任用時期:着任日〜令和9年3月31日(最長3年更新)
■勤務日数:月20日間を基本とする
■勤務時間:一日当たり7.75h(原則、出勤の定めはない)

<応募資格>
■三大都市圏または地方都市(条件不利地域以外)に居住
■任期中、森町に住民票を移し居住できる方
■普通自動車運転免許保有

<必須スキル>
■プロジェクトマネジメントスキル
■PCスキル・オフィスソフトの基本的な使用経験

<歓迎スキル>
■コミュニティ施設運営もしくはコミュニティマネージャー等の経験
■新規事業開発の経験
■イベント等の企画業務の経験

<求める人物像>
■地域住民、行政等、立場の違う人々と協力することが苦にならない方
■主体的に考え、スピード感をもって行動できる方
■中山間地域での暮らしに関心がある方
■人の話を聞くことが好きな方/得意な方

<報酬>
■報償金 月額227千円
※活動日数は月20日間(7.75h/日)

<住居支援>
■車両や住居にかかる費用は経費扱い(上限有り)
 車両:2.5万/月(燃料費、保険料、維持管理費等・持ち込みが前提)
 家賃:3.0万/月(相談可能)

<兼業・副業>
■副業可

<選考フロー>
・オンライン説明会:9月 17日 (木曜日) 19:30~21:00
説明会募集〆切:9/20(日)23:59
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